次の服ヲ掘ルのテーマはフライトジャケットにしよう。
そう決めたとほぼ同時にA2の解体は必須だろうと感じるほどにフライトジャケットを代表するような1着です。

服ヲ掘ルとFUKUBORIには相関性があるとはいえ、解体した物すべてを製品化していく訳ではありません。
製品にしてく中で一番大切にしている事は、掘ってみて面白かったか?好きになったか?という視点です。
加えて、自分のお願いできる工場の制作背景において互換性があるのか?ということも大事にしています。
というのも、工場によってそれぞれ強みがありなんでも制作できる訳では無いのです。

FUKUBORI KIP Leather A2 JACKET
368,500-(tax in)
SIZE 1,2,3展開

Size 1 2 3
バスト 109.5 115.5 121.5
肩幅 44 47 50
着丈 60 62 64
袖丈 61.5 63 64.5

 

A-2ジャケットの製作にあたって、まず取りかかるのは革探しでした。
オリジナルのA-2に使用されていたのは、言うまでもなくホースレザー。
その歴史的背景を踏まえた上で検討を始めましたが、FUKUBORIは「レプリカを作るためのブランド」ではありません。
だからこそ、過去の仕様をそのままなぞるのではなく、「今、自分たちが作る意味のあるA-2」を見据えて進めていきます。

とはいえ、革に関してはまだまだ素人です。
なめしや仕上げといった工程において、自分たちだけで判断できる知識も経験もありません。
だからこそ、信頼できるアドバイザーの存在は不可欠でした。

そんな中で数年前、ありがたいご縁がありました。
僕たちの拠点である岡山県・児島のすぐ隣、姫路の職人さんをご紹介いただいたのです。
そこからお話を重ね、姫路にある大きな鞣し工場を見学させていただけることになりました。

当初は、あくまでホースレザーを使うつもりで動いていました。
しかし、実際に姫路に足を運び、現場で話を聞き、目の前で革を見ていく中で考え方が少しずつ変わっていきます。

姫路は、日本最大の皮革産地。
数百軒ものタンナーが集まり、国内に流通する牛革の7割以上がこの地から生まれているとも言われています。
加えて、見学した工場では、「食肉としての命を最後まで使い切る」という姿勢が強く根付いていました。
この言葉が、牛革(カウレザー)を素材として再考するきっかけになったのです。

そんな思いを抱きながら現場を見学していく中で、
「FUKUBORIが使うとしたら、青みがかったクロム鞣しの革じゃなくて、やっぱりタンニン鞣しのヌメ革だろうな」
正直、そんなふうに単純に思っていました。

けれど、それに対して職人さんたちから返ってきたのは、思わず唸るようなひと言でした。

「絶対にダメとは言わない。けれど、それを着る人のことを本当に考えているとは思えない。デメリットの方が大きいよ。」

——痛快でした。

思いを貫くことも時には必要だけれど、こういった率直な意見こそが、“プロとして分業する”というものづくりの強さだと僕たちは考えています。
そしてそれは、信頼できる相手とだからこそ成立するコミュニケーションだとも感じました。

僕たちの考えや、FUKUBORIのものづくりの背景も理解してもらいながら、何度も対話を重ねていく中で、
「これなんて、どうですか?」
と見せていただいたのが、今回採用したキップレザーです。

靴などに使われることはあるけれど、洋服に使われることはあまりない。
けれど、手に取った瞬間に感じた滑らかでしっとりとした肌触りと、密度のあるしっかりした繊維構造。馬革の光沢や硬質さにはない、牛革ならではの「しっとりと沈んだような迫力」と成牛よりも細やかな肌目 の 上品な仕上がりが気に入っています。



製品の仕様の面に関しては基本的には元にしたA2をサンプリングする形になっています。
革ならではの截ち切りの部分や針穴が残るので縫い直しが出来ない繊細な所、その反面、リブの上にステッチを乗せる始末や前立て部分の左右の違いなど、面白いと感じるところも多かったです。
そして僕の見た個体は、縫い代を漉いたりしていませんでした。