今回はUS Army 『M65  Field Cargo Pants』です。

M65 Field Cargo Pants(M65フィールドカーゴパンツ)は、M65フィールドジャケットと同様に、アメリカ軍で採用された耐久性の高いミリタリーパンツで、野戦での使用を目的に設計されたものです。これらのパンツは、過酷な環境に耐え、実用性を追求したデザインが特徴であり、現在でもビンテージファッションアイテムとして人気があります。

M65フィールドカーゴパンツの特徴

  1. デザインと構造:

    • シルエット: M65カーゴパンツは、ゆったりとしたストレートフィットで、動きやすさを重視したデザインです。戦闘や野外作業中に快適に動けるように、足元にも余裕のあるシルエットになっています。
    • 生地: ナイロンとコットンの混紡素材(NyCo生地)が使用されています。これは、耐久性、通気性、そして速乾性に優れた生地で、長時間の使用にも耐えられる設計です。また、防風・防水性もある程度備わっており、過酷な天候条件下でも使用可能です。
    • カラー: 主に「オリーブドラブ(OD色)」や「カーキ」、「ウッドランドカモフラージュ」などのミリタリーパターンが使われています。
  2. ポケット:

    • カーゴポケット: 脚の両サイドに大きなカーゴポケットがあり、これが「カーゴパンツ」と呼ばれる理由です。これらのポケットは、軍用パンツとしての実用性を高めるために設計されており、工具や装備品、地図などを収納できるように大容量です。ポケットにはフラップが付いており、物が落ちにくい工夫もされています。
    • バックポケットとフロントポケット: ヒップとフロントにも収納力の高いポケットがあり、物を収納するための実用的なデザインが施されています。
  3. ウエストとフィット調整:

    • アジャスタブルウエスト: M65カーゴパンツにはウエスト部分に調整可能なタブが付いており、フィット感をカスタマイズできます。これにより、サイズが多少異なっても使用者が自分に合わせて調整可能です。
    • ドローコード: 裾部分にもドローコードが付いており、これを絞ることで、靴やブーツに合わせて裾をフィットさせたり、ほこりや砂の侵入を防ぐことができます。
  4. ライニングと防寒対策:

    • ライナー対応: 寒冷地での使用を想定しており、パンツの内側に取り外し可能なライナーを装着できる仕様になっています。このライナーにより、極寒の環境でも使用者を保護する防寒対策が施されています。
  5. 経年変化: M65フィールドカーゴパンツも、ジャケット同様に経年変化が魅力の一つです。洗濯や長期間の使用により、色が褪せたり、部分的に色ムラが出ることがあります。この自然な褪色は、ビンテージ市場で非常に高く評価されており、独特の風合いが出ることからファッションアイテムとして人気があります。

ググってみました。
M65についての概要はこんな感じだとして、ここではもう少しマニアックな話をしていけたらと思います。

M65CARGO

全体像としてはこんな感じです。
CARGOパンツなのでやっぱり太いよねってのはもちろんあるんだけど、
是非注目して欲しいのはウエスト(身頃の上端)からヒップに向かっての出だしの線の取り方。
出だしが直角とまでは言わないけれど、上から5㎝程度下がった位置から膨らみが発生している事が分かります。
これが何を表しているのかと言うと色々考える事が出来るのだけど、
要するにウエストの繋がりがかなり直線的になっているという事。

左前身頃の脇側に張り付けてる細長いパーツがウエストの見返しのパーツ。
そうなんです。完全に直線のパーツになっています。
えっ?
と思うパタンナーさんもひょっとするといるかもしれませんが、ビンテージのミリタリー関連アイテムのウエスト見返し型はこうなっている事が多いです。
僕の考える理由としては、ラッパという縫製効率を上げる縫い方をする為。
だと思うのですが、そもそもパンツにはウエストで切り替えるベルトタイプの物も存在するわけですし、形においても意図があった可能性はあるかもですよね。

ちなみに、現在の日本の縫製の現場でこれをやろうとするのは諸刃の剣です。
諸々理解して作成したパターンの形状、設備の面もそうですし、慣れていない事もそう、沢山の不具合が起きる可能性を乗り越える必要があります。

見返しのステッチがチェーンステッチになっている事を除けば、今の物づくりで採用する理由は無いようにも感じます。
見返し付けがチェーンステッチになっているパンツを見かけたら、「おっ」と観察してみたくなります。


M65 CARGO 裾ヒモ


裾を絞れるようにドローコードが通っいます。
紐の出口はキク穴になっているのですが、その部分の補強が共布で施してあります。
接着芯を使っていないこの感じが僕はすごく好きです。

紐の通し方です。
それは分かってますがな。という人も多いと思いますが、間違えてしまうと穴と穴の間の数センチを絞る事が出来なくてなんだか不格好?という感じになるので話しておこうかな。
M65CARGO裾紐
紐の通り方としては、穴と穴の間の数センチには二回紐が通るようになっています。
言葉で説明難しいので
M65CARGO紐の通し方
こんな感じ。
こうなる事で、穿いた状態で引っ張る向きがスムーズになると共に全体を絞る事が可能です。
ちょっとしたことだけど重要な事ですよね。

糸摘み


今回の個体はデッドストックだったという事もあるかも?
というかデッドストックだから確実に言えるのですが、糸摘みという概念が無かった?と思う程に縫い端の糸が残っていました。
これもまた良しと思う事もあるのですけどね。さすがに残り過ぎかな。
(VINTAGEに限る)

後玉縁ポケットの口巾

玉縁の巾は1㎝です。
つまり縫代は0.5㎝とかかなと思う所ですが、実際には中心に向かって縫代が太くなっていました。

玉縁において中心が開いて見える事が多いのはこの為なんだろうと思ったりします。
実際に、VINTAGEの玉縁ではこれまでも同じようになっている物は多かったです。

もちろん普段の型紙作成の仕事で意図してこのように記載してパターンを作る事はありませんけどね。こんな目線を持ってみることが出来るかどうかは少しだけ大事な気もしてます。

ネーム付けステッチ


糸摘みに関しても触れましたが、これもまた乱れ気味です。
でもこれに関してはそんなに悪い気はしないので不思議です。
(VINTAGEに限る)
ステッチの始まりと終わりが飛び出しているのもまた良きです。

ファスナー端カンドメ


前明きファスナーの止付け端が閂止めで押さえられています。
これは表には出ていないので途中の工程で止付けたという事になります。
隠し閂止めってやつですね。
こういうのは大好物です。ステッチじゃなくて閂であることとか、これを手間と感じていない事が今とのギャップに感じて僕は好きなんですよね。

テープ止め閂止め



ウエスト回りには裏に付いているテープ類を止付ける為に閂止めが表にぶち抜かれています。
実はその中に、縫われるタイミングが異なるテープが存在しています。
その閂は恐らく仮止めの役割として施されていて、リーバイスのTYPE3型のジャケットの胸フラップを髣髴としました。
はい、僕はテンション上がるやつですね。
表だけの画像では分からないと思うので内側です。
どれでしょう?
と思ったのですが分かりづらいので説明しますね。
下側にフラシで付いているボタンが付いているタブがあります。
その上側を閂で止められているのですが、表には見えていますが見返し側には見えていません。
なんと、表に見える側の隠し?閂止めです。
ベルト付けがチェーンステッチという事を考えると、身頃側に先に付ける事に納得がいきます。

上前端仕様

上前の端はファスナー側の見返しが上に乗っかる形で縫製されています。
ではウエスト側の見返しはどこまであるんだろうか?
パターン作る上でどこで切るのかはそれぞれのやり方があるので気になるんですよね。


そんな目線で見てみるのもたまには良いですよね。
先まで入っておりました。
そして、更に見るべきポイント。
ファスナー側の見返しを解いたのにウエスト見返し付けのステッチが残っていますね。
つまり、ウエスト見返し側の方が先に縫製されているという事が分かります。
だから?と思う方もいるかもしれませんが、これもまた結構ポイントです。
縫製が。という事ももちろんあるのですが、前明きのJ型のステッチに対してウエスト見返し押さえSTがどう見えるのか?という事にも繋がるのです。




裾の芯が共布だった!と前述しましたが、フラップの力布は芯地が使われています。
確か、M65PARKAの時も同じように芯の使い分けがされていました。
もしかすると、ドット釦のように打ち付ける物は芯でキク穴のうように縫う物は共布。
のうように決まりでもあったのでしょうかね。
こんな違いも妄想の余地があり楽しいですね。
細かい事言い出すと本当にずっと書けそうですが疲れてきたのでここらで。
画像はいくつか載せておきますね。

という訳で。今回も楽しかった!!

US Army 『M65 Field Cargo Pants』
これにて。