Vintage Levi's 557
【このGジャンを解体しなかったら、継続出来ていたか分からない】
そう思う程に、このジャケットとの出会いは僕にとって大きな意味のあるものでした。
見えない部分に多くの気づきがある『557』を今回は見ていきましょう。
「解体したからこそ分かる事って結構少ないんだな」
2年くらい前、情報を発信する事も目的の一つとして501BIGEを解体した後そんな風に考えていました。
上物もやらずに結論を出すのは早いだろうと次に取り組んだのが
557という今回ご紹介する3rdタイプのGジャンです。
そして様々な隠れた仕様を発見する度に、
誰も知らない秘密を知ってしまったかのようなそんな高揚感を得る事になりました。
「そんなの興味ない」「勿体ない」
などの意見をもらう事もありますが、
着て楽しむ事以外の服との触れ合い方の一つとして
楽しんでくれる人が居てくれると信じて活動を続けていきます。
胸ポケットのフラップ。やばくないですか?
この1枚を見るだけでかなり多くの事を見つける事が出来ます。
ですが、
何に高揚してるの?と感じる人も多いかもしれません。
フラップの上側ってフラップの上にある横向きの切替線の中に
縫いこまれています。
この画像を見ればお分かり頂けると思いますがフラップは1枚の布を2つ折りにして形成されているタイプです。
フラップの上側は縫いこまれて見えないので1枚で形成しても、2枚で形成しても表側からの見え方はかわりません。
しかもこの切替線は巻き縫いという縫製仕様で縫われているので解かない限り絶対に見えない部分です。
(巻き縫いの説明に関しては割愛します)
絶対に表から見えない仕様
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
となった僕の次なる思考は
【なぜ1枚形成のフラップにしたのか?】
こういった考察が面白いです。
皆さんも考えてみてください。
解く前の胸ポケットの裏側です。
少し分かりづらいですが、向かって右側の上側に閂止めがあるのが見えるでしょうか?
(縦向きのではなく、縦向きの閂止めの右上の横向きの閂止め)
この閂止めは表からは見えません。
隠し閂ってやつですね。
隠しの仕様は501の後ポケットだけの仕様では無かったんですね~。
現行の3rd型には恐らく入っていない物が殆どですが、
皆さんがお持ちの3rdGジャンには入っていますか?
そしてこの閂止めが何故必要なのかについてですがこれは解かなければ
分からなかったと思います。
恐らくフラップの仮止めをする為に入れられた仕様です。
(ほぼ確信していますが、100%言い切れる保証は無い)
先のこの画像を見るとなんとなく想像し易いです。
この事実、フラップの形状と合わせてかなりテンションが上がりました。
というか、
これまでに何型も3rdタイプを見てきたのに、気が付いていませんでした。(恥ずかしい!)
因みに、LEEのGジャンは閂止めでは無く普通のステッチで仮止めがされていますし、現代では溶ける糸などを使って仮止めしていたりするので見えなかったりします。
普通ミシンでは無く閂止めにしてる所にリーバイスが王様たる由縁も感じます。
と言いつつ、その後の557XX(もう少し古いもの)は本縫いで仮止めされている事も発見しました。
少し視点を変えつつ更に思いを馳せてみます。
501XXの後ポケットの隠しの仕様ですが、
リベットと閂止めの両方が使われる理由が見当たらない。
と言われたりします。
そこで今回の
【隠しカンドメ=仮止め】
という過程をパンツに当てはめてみると
501XXにリベットと閂止めの両方が採用されていた事も納得出来そうな気もしますね。
衿付け止まり。
これまた分かりづらいのですが
衿付け止まりに閂止めが入っています。
ほつれないように入れられていると思いますので
これについては細かく語る程の内容は無いのですが、
これこそ解かなければ絶対に分からないので大興奮でした。
それに、
わざわざ糸色変えてまで閂止めが入っているって事は
前端の処理をしてから衿を付けるまでの工程の間に解れてしまう可能性の方がリスクだったのか!と考えてみたりします。
パッチ部分。
パッチ付けがネックラインから始まり方に向けて抜けていく形でステッチ入れられています。
返し縫い見えないし、素敵!
これはかなり個体差のある仕様なのではと考えています。
僕なら購入したVINTAGEがこの仕様だったらテンション上がります。
実も先に述べたフラップと同じくらいの熱量で語りたい事がもう一つあるんです。
それが、袖と身頃の関係です。
https://ikajum.jp/blogs/the-study/vintage-levis-507xx-late
でもこの話には触れているので是非そちらも見て頂けると分かりやすいかもしれません。
袖と身頃の縫い合わせはこれより以前にはずっと巻き縫いで縫製されています。
ですがなんとここで遂にロック始末に変更が成されます。
506XXと507XXの形と比較して考えてみると557は507に近いイメージです。
それが何を意味するのか?
これは完全に勝手な妄想のお話ですが、
506XXの袖は比較的に巻き縫いしやすい作りになっており、製造上の問題はそこまで起こらなかった。
↓↓
507XXでは野暮ったさを無くしスタイリッシュなデザインにするためにアームホールや袖山に変更を加えた事で多少巻き縫いはしづらくなり、製造上の問題が発生するようになった。
↓↓
そして557では製造上の問題を解決する事が必要になりアームホールの縫い合わせを巻き縫いからロックに変更する事になった。
というストーリーがあったのでは?なんて。
どんな経緯があったにしても、アームホールを巻き縫いからロックに変更されているという事は、巻き縫いである事(工程にロックが無い事)よりもシルエットを重視するという選択をしたという事であり、パタンナーとして感慨深い。
釦の中身を見てみる。
裾のタブ。
なんの変哲もないタブに見えますが、ここでも発見がありました。
オレンジ色のステッチとは別に生地と同色のチェーンステッチが見えます。
このタブの作りは細長い長方形をU字型に縫ってひっくり返すのではなく。細長い長方形の端を折り込んでから二つ折りにしてステッチで押さえています。
つまり地縫いは有りません。
そこで、端の折り込みをきっちり押さえる為に先にチェーンステッチで押さえてあるという訳です。
これってつまり、細長ーいパーツの端を折り込んでステッチで押さえてから、必要なサイズにカットして作っている事を物語っています。
意味不明。という方もいるかもしれませんが、
要するに縫製仕様の進化を感じるエモいポイントです。
今回も楽しかった!!
LEVI'S 557-後期
これにて。