この服が作られたのがなんと約100年前。
感慨深いし、貴重な物を勉強させてもらっていると自覚を持って取り組まなければと気が引き締まりました。

PコートのPの意味とは?
USN P-Coat

何気なくピーコートといつも使っていますがPの意味をChatGPTで問いかけてみました。
―――――――――――――――――――――
「Pコート」の「P」は「Pilot(パイロット)」または「Pea(ピー)」の略語とされています。一般的には「Pea Coat」とも呼ばれ、艦船の乗組員やパイロットなどが着用していた防寒用の短いダブルブレストのウール製コートを指します。このスタイルのコートは、軍の制服としても使われ、非常にポピュラーであり、民間でも一般的に愛用されています。「Pコート」はそのようなデザインのコートを指す一般的な用語として使用されています。
―――――――――――――――――――――
という事らしいです。

さてさて、
デニムパタンナーと名乗る僕にとってはどちらかと言えば多少守備範囲と異なるアイテムである事も事実。
どこまで昇華出来るかという不安もありますが、しっかり味わっていきたいと思いますっ!

 

今回最大の発見の一つ。
『20’sのPコートは開襟タイプでは無い』
要するに、衿よりしたのボタンは上まで閉じるスタイルが基本形という事で、Pコート着用の基本スタイルはTOP釦を開けて身頃が開いている状態だと、
勝手に認識していた僕にとってはとても大きな発見でした。

それが分かった大きな要因は2つ。
・一番上のボタンホールの表裏。
・ラペル(身頃の返り部分)の内側。
でした。
実はこの2つは40'SのPコートと比較する事で確認できました。

ボタンホールの方は
20S→前身頃(表側)がボタンホールの表が見える。
40S→前見返し(内側)がボタンホールの表が見える。
という状態でした。(個体差あるので注意)

当然ですがボタンホールは表側が見える事が当たり前です。
これで分かる事は、どちら側が見える事を当たり前としてホールの向きを決めたのかという事で、つまりどの着用スタイルを基本としたのかが見えてきますね。

ラペルの返りの内側は複雑になるのでめちゃくちゃ簡単に書きます。
20S→内側に折り返りに対する展開や仕様が見られない。
40S→内側に折り返りに対する展開や仕様が見られる。
という感じでした。

綺麗に返る為のパターン操作があったかどうかというのは縫いあがった物を見ても確実な事は言い難い。が、この20'sのコートには展開は無さそうに見えました。
何よりも、衿の返り部分にテープを貼ったりするような仕様も無かったという事からの判断でもあります。


USN Pコートの釦

UNS Pコートの釦
36㎜もあるボタン。
ミリタリー関連アイテムに見られる大きなボタンはグローブをしていても着脱がしやすくするためというのがあるが、胸辺りにハンドウォーマー機能を付けている事を考えると、このアイテムも同じ事が言えるかもしれない。
と思いつつ、、
ボタンのデザインも込みで装飾的な意味合いもあったのでは無いかなぁというのが僕の希望的観測です。
年代によってもボタンのデザインが変わっていて、年代がもう少し後になると周りにある★星の刻印が無くなります。

USN Pコートの小釦

USN Pコートの釦
USN Pコートの小釦
衿のチンストラップ用のボタン。
先にボタンに比べて15㎜と小さい物になるものの、イカリ⚓のマークが刻印されており、そういったデザイン性もビンテージの圧倒的な魅力につながっていると思います。
現在に残るということは圧倒的な生産量があった可能性が限りなく高く、その生産数があったからこそ取れる可能性のある小さなボタンにまでデザインを入れ込む事が出来たとも言えるのかなぁなんて、、
(ミリタリー関連アイテムについてはコスト度外視の物とかもありそう)

USN Pコートのベント仕様

USN Pコートのベンツ
ベント明き。
分かりづらいですが後中心にあるベントの部分です。
向かって右側が裾で横から見てる感じです。

そしてベントのスリット部分になんと、穴が開いていて縫われていません。
ベントの部分以外は背中も裾の閉じてあります。
縫いなおされた?という可能性も考えたし無いとは言い切れません。
ですが僕にはその形跡は発見できませんでした。
これを見て面白いなぁと思う人は少ないかな?

USN Pコート 袋布

USN Pコート 袋布
袋布部分の内側。
案外あるあるですがボタンホールが袋布を押さえてます。
Topsの腰や胸にあるポケットの袋布が遊ぶ(プラプラしちゃう)という問題がたまに起こります。(基本的には裏無しの場合)
それをダメとした場合において一番手間の無い押さえ方とも言えますね。
当然、そんなこと気にしなかったという可能性もありますけどね。

USN Pコート 袖口と裾

USN Pコート 裾始末

USN Pコート 袖口
袖口

同じ仕様にする事も多いと思いますが、別々の仕様で
使い訳られています。
そもそも身頃の裏と袖の裏で素材が違うので素材での仕様分けが大きな要因だと考えているのですが、可能な部分は簡潔にするというような事もあるのかなと思うと『機能と効率のバランス』というミリタリー関連の面白くて好きな部分を少し感じてます。

USN Pコート 袖山

USN Pコート 袖山

USN Pコート フラップ比較


腰のフラップは後の年代になると無くなります。
全体を俯瞰してみた時にフラップが無い方がスッキリして見えます。
意匠性の問題だったのか?
効率可の問題だったのか?

USN Pコート 内側

USN Pコート 後

裏地と表地が突き合わせなことに違和感を覚えますよな~。

USN Pコート アームホール裏

USN Pコート アームホール裏

ここに関しては手縫いによる始末が見れます。

その内側。

USN Pコート ポケット繋ぎ

USN Pコート

内側にポケットとアームホールを繋ぐ布が入っています。
ん?どこも吊られてたり支えられてたりしてないような、、
なんのためにあるのでしょうか?

USN Pコート テープ

USN Pコート 縫代

縫代にテープがたたき付けられています。
接着では無く縫い付けです。
手間かかってるなぁと感じます。

 


このコートはきっと僕の記憶に残り続けると思います。
なぜなら、慣れないこのアイテムに手を出したのは
『雑誌に掲載してもらったからこそ』
最後になりましたが、実は雑誌の2023年1月発売の3月号の掲載して頂きました。そこでは40Sとの比較で並んで載せてもらっています。

ここまで読んでくれてありがとうございます!

というわけで、
自分の守備範囲外でもやっぱり多くの学びがあるなと嬉しくなったとさ。
今回も楽しかった!!
【USN 20'S P COAT】これにて。