FUKUBORI TrackerJacketについて
今回はFUKUBORIの製品、TrackerJacketについて書いていきます。
ビンテージのトラッカージャケットは本当に面白く、それぞれの年代に沢山の魅力があり甲乙つけがたいというのが正直な所。
そんな気持ちもあり、先に書いたFUKUBORIの5ポケットに合わせた年代を選択する事にしました。
TYPE-1STと呼ばれるモデルをサンプリングしています。
今回はFUKUBORIとしてどのように解釈して制作しているのか、書いていきますね。
まずメイン生地について
(パンツの回と同じ内容ですのでそちらを見た方は飛ばしてください)
『服を構成するのは生地』そう言っても過言では無いくらいに生地は重要なポイントになる事は間違い無いですよね。
数多くのブランドが、素材にこだわっている事を打ち出しています。
FUKUBORIも当然拘って選んではいますが、オリジナル素材ではありません。
物づくりをする人間としては、オリジナルで作る事も出来たら良いなと考えてはいます。FUKUBORIではありませんが過去に一度オリジナルデニム作りに挑戦した事があるのでコストやクオリティに対して自己満足にならず、既存の生地を超えるような素材を作りだす難しさを知っています。
そして、西日本、備後地区には生地のプロフェッショナルである機屋さんで織られた拘りの生地が数多く存在しています。
そのセクションのプロが拘り制作している生地がブランドがオリジナルで制作している生地にクオリティで劣る道理は無いと僕は考えています。
違いがあるとするならば、
唯一無二かどうか。
ブランド側の理想にどこまで近いのか?
この二点のみであろうと思います。
そしてFUKUBORIのデニムは老舗機屋の一つである「日本綿布」製のデニム生地を採用しています。
「日本綿布の特徴は【表情感】です。
表情のある生地を作る事を得意としています」
お世話になっている生地屋さんはそんな風に話されています。
僕のイメージは老舗にも関わらず、挑戦してくれる機屋さんという感じ。
そんな日本綿布の開発している生地からFUKUBORIとして選んだのは
この生地は12オンスのセルビッチ。
タテヨコ共に8番手という太さで且つ、どちらもムラのある糸を使い織られています。
「それはどういう事?」そんな風に思う方も少なくないと思いますので詳しく書かせてもらいますね。
12オンスの生地というのはタテ糸7番、ヨコ糸10番(数字が低い程太い糸になる)という感じで、タテ糸の方をヨコ糸よりも太い糸を使う事で表面のムラや凹凸を目立たせる事が多いです。
そんな中、生地はタテヨコ共に8番手という同じ太さの糸を使用しています。それはつまり、どちらかに偏らせた表情にする事無くバランスも表裏のバランスが良い生地になります。
それだとキレイな表情になるのでは?
そう思ったのですが、どちらもムラのある糸を使用しているのでそんな事はありません。
このバランス感がFUKUBORIデニム製品として選択するに至った一番の理由です。
加えて、生地端の赤耳の部分を赤い糸を際にもってきて特徴を作っている点も僕は好きです。日本綿布だけの特徴では無いのですが、この耳には日本綿布のイメージがあります。
次にシルエット
ゆったりとしたBOX型のシルエットです。
1st型のGジャンの特徴の一つとして、アームホールと袖山のバランスがあります。巻き縫いというデニムならではのミシンで縫われているのですが、この縫い方を採用する為には出来る限り直線出来なラインである事が好ましいです。
カーブでは出来ないという事ではありませんが、縫製が難しくなったり、シルエットの構成に無理が出たりする場合があります。
皺の無い美しいシルエットを目指すのであれば巻き縫いをやめてロックの始末に変更する必要がありますが、FUKUBORIにとって今回のGジャンにおいては巻き縫いである事の方が大事だったりするんですよね。
もちろん時と場合によって変わりますけどね。
そんな風にシルエットと縫製仕様が相互に影響し合う事にも面白さを感じ、
ビンテージをしっかり意識しつつも理想の形を目指しました。
胸ポケットとフラップ
一見すると単なるフラップポケットなのですが、実は多くの拘りが入っているポイントです。
内側を見ると分かりやすいのですが、フラップとポケットのステッチが繋がっています。
これは80年前ならこの方が効率が良かったのですが、現在の日本の現場においては実現するのが難しかったりします。
何故なら、縫製の工程や、着用時に糸が切れてしまうリスクがあるからです。
FUKUBORIではこの部分に関しては何があっても工場さんにNOクレームを約束する事で実現しました。
(もちろん熱い思いを語ってやりたい事を理解してもらう事が必須の前提)
ほんの些細な事に感じるかもしれませんが、過去と今の違いを感じ、
普段着用している際にちらっと見える糸の繋がりに面白さを感じてもらえたら嬉しく思います。
前中心の縫い方
この年代以降のGジャンになると、上から下まで一気にステッチが入るようになります。
その方が効率も良いですが、上と下を分ける事でステッチの見え方を調整する事が出来るし結構大事なポイントだったりします。
縫い重ねる位置
更にもっとマニアックに。
全ての箇所とは言いませんが、デニムの製品においては縫い重ねる位置や返し縫いについても指定さえてもらう事があります。
例えば、
前のプリーツ押さえのステッチは前後で上下逆の縫い重ね位置になっていたりします。
なんでもかんでもビンテージを踏襲したい訳ではありませんが、面白いと感じたポイントは残すようにしています。
それに加えて、オタクも黙らせる製品を作りたいとの想いもあるのでポイントだと思う部分は採用しています。
「レプリカブランドじゃないのに、やってるねぇ」と。
自分がオタクだからこそ、なのかもしれませんが自身を持って細かく拘っています。
ブランドネーム
そういえば書いていませんでしたが、ブランドネームは綿×レーヨンで作っています。
ロゴの部分が小さめなのでレーヨンの光沢は分かりづらいですが、むしろそれがFUKUBORIらしくて気に入っています。
袖は切替無し
多くのGジャンは袖に切替が入っています。
(上記画像はFUKUBORIではありません)
それは単にパーツを小さくして1着あたりに必要な生地の長さを減らす為であったり、シルエットを構築する上で必要な切替だったり様々です。
それも時代と共に変化していくポイントだったりするのですが、1STタイプのGジャンにおいては前者の理由の切替です。
その変化はパタンナーである僕にとって、とても重要な事です。
FUKUBORIのGジャンでどうしようかと考えた結果、切替は必要無いという結論に至りました。
生地を使う長さを減らせるに越したことはありませんが、それは全体の生産量によって重要度は変わると僕は考えています。
伴って、今のFUKUBORIにとっては重要度は高くありません。
今後、違うモデルのGジャンを作る事や生産数を増やす未来を想像すると今のFUKUBORIにとっての最適が見えてきました。
結論【切替は必要無い】
ポケットステッチ
ポケットはダブルステッチで縫い付けられています。
二本針と呼ばれるミシンで縫う事で一度の縫製で二本同時にステッチをいれる事が出来ます。
昔のダブルステッチの特徴として、角の部分に中さな三角が発生します。
これはミシンの仕組みで出来るのですが、分かりやすいビンテージの仕様としてポピュラー?な仕様です。
今のミシンの性能であれば、この三角を作らない事も出来るのですが一目見れば二本針のミシンを使用していると分かるところが良いですよね。
針バックル
後の尾錠ですが、針があるタイプを使用しています。
というのも、このバックルはビンテージでも針有りから無しに時代を追って変化していきます。
そして最終的には後のバックルは無くなります。
針がある事で当たった物を傷つける可能性があるため廃止されていきます。
現代でも、針有りを使うブランドさんはごく一部です。
それでも敢えてFUKUBORIで針有りを選んだのは、駆け出しの今だから出来る事もあると考えているからです。
駆け出しだからこそ、
針有りなので気を付けて着用してください。
そんな僕の声は皆さんに届きやすい。
そのように思います。
それでも気になる方もいらっしゃると思います。
そんな場合は尾錠自体を切り取ってもらうのがおすすめです。
ビンテージにも時折みられる方法ですし、何を隠そう、
僕も切って着用してます。
細かい所に対する拘りが奥行となります。
「神は細部に宿る」
この精神が大好きであり、それを信じています。