FUKUBORI Field Parkaについて
今回はFUKUBORIの製品、Field Parkaについて書いていきます。
M65シリーズを深堀していく中で欠かせないアイテムの一つとして制作しました。
M65 Fish Tail Parkaは現在の服作りにおいて、もはや定番と言っても過言では無いくらいに毎年様々なブラントからリリースされていますよね。
それもあって自分たちが作る必要があるのか?という思考になりFUKUBORIで制作するかどうか凄く悩んだりもしました。
いざ作ってみて、定番化するのにはきちんと理由があるんだなと感じています。
このアイテムの持つ雰囲気はやっぱり凄いなと。
生地を紹介
コットン70% / ナイロン30%
CottonNylonのダック生地です。
CottonNylonは速乾性と耐久性、難燃性と吸湿性を兼ね備えた素材なので当時のミリタリーアイテムに多く見られます。
当時のイメージを残したかったのでコットンナイロンにする事は決めて探していました。それだけだと選択肢がかなり広いのですが、FUKUBORIではキナリ系の色味の生地しか使わないと決めています。
もちろん適度なシャリ間と肉感に加えて理想の色味に近い生地をえらんだつもりです。
生地屋さんが在庫してくれている既存の生地を選んだ。
こう言うとあまり拘っていないような、
オリジナルで作りました!って言うと品質が高いような。
そんな錯覚を覚える側面ってあると思っています。
僕は既存の生地を使う事も選択肢として同等の価値があると考えています。
そもそも、オリジナルで作る生地も生地屋さんが在庫してくれている既存の生地と同じく国内の機屋さんで織る事になります。
そして、余程生地の事に明るいブランドで無い限り、生地屋さんと機屋さんに相談しながら作っていく事になります。
既存の生地も、品質、表情、コストに至るまでプロがバランスを考えて制作しているとしたら。
それって、糸の品質を除けば生産の質は変わらないと言えますよね。
つまり、既存の生地には存在しないような生地への拘りや理想が無い限りは甲乙つけがたいのでは無いかと。
もちろんFUKUBORIも最適解や理想がオリジナルである場合も今後出てくる事はあると思います。
ライナーの生地
ライナーの素材はオリジナルで制作しています。
中綿の素材は帝人が開発している「ソロテックス」を使用して、FUKUBORIの生地裏のプリントに見立ててキルティングのステッチの色を裏側ブルーにしています。ステッチの形状をひょうたん型にするのも捨てがたかったのですが、プリントと合わせた見え方にするために格子型のステッチを採用しています。
ブランドが制作するこのアイテムのライナーはライナーだけでも着用できるようにデザインされている事も少なくありませんが、FUKUBORIはデザインはしない事を掲げています。
なので、ライナーだけで着用できるように変更はしていませんので、あくまでもライナーとして使う事のみを前提として作られています。
ドット釦
実は釦等の附属品にはそこまで重きを置いていないFUKUBORIですが、もちろん適当に決めたりはしません。特に今回はドット釦の形状の最適解になかなか辿り着けづ苦戦しました。
前端やポケットなどは隠れているドット釦が付いているので見えない側のデザインはそこまで気にする必要は無いのですが、3個だけ見えているボタンがあります。
この3個だけ見えるこの釦が曲者でしたが諦めず探して納得いく物に辿り着きました。
釦等の付属品を取り扱う会社に何件もお邪魔したり、取引先の工場さんに何か知らなかと相談してもなかなか決まりませんでした。
これは大きく妥協して選ぶしか無いかなと諦めかけたのですが、
YKKの附属帳を1ページずつ改めて見ていく中で、もしかしてコレ使えるのかも。という物を見つけました。
実はそれまでにもYKKさんに直接お邪魔して、営業の方に事情を説明して何かありませんか?と相談していました。
見た目がビンテージと同じ物を探していた訳では無く、
『ビンテージはもちろん考慮しつつ、今使うとしたらどれ?』
という考えを持っていつも探しています。
つまり主観の要素がかなりある事になります。
それによってこちらの探している物が100%伝わる事は無かったのだと改めて感じると共に、同時に自分で探す事の重要さを感じました。
探しに探して辿り着いたのですが、普通にYKKで購入出来る釦なのです。
でも、とても納得して使わせてもらっています。
ポケットとフラップ
ポケットの口の部分がフラップに架かっており、釦を閉じると折り返る形状になる事で物が落ちないようになっています。
MILITARYのポケットによく見る仕様ですが、架からないように作るよりもひと手間増えてしまいます。
現在の制作において、どこまでやりますか?というポイントの一つです。
それでいうと袋布が二重に、ハンドウォーマーとしての機能があるのですがそれもまた同じようなポイントになります。
FUKUBORIはもちろんどちらも採用です。
縫製工場
服作りにおいて、
『どんな縫製工場に依頼するのか?(依頼出来るのか?)』
これはとんでもなく重要です。
どんな物が得意なのか?
どんな設備があるのか?
どれくらいの数が必要か?
どんな姿勢で取り組んでもらえるか?
など挙げればきりがない程にポイントがあります。
僕は生産の現場にいます。
普段から多くの工場さんとやり取りします。
『このアイテムはこの人にお願いしたい』
そんな風に自分思う理想の形をイメージして依頼を進めていく事が可能です。
しかも世界的にも有数な産地でもあるので、最高峰のクオリティを追求する事すら不可能ではありません。
FUKUBORIはまだ小さな小さなブランドです。
それでもBIGブランドと肩を並べる縫製クオリティが実現出来るのは、そういった理由からです。
このアイテムは、積極的にアドバイスをしてくれる、服作りに本当に熱い工場さんに依頼して縫製してもらっています。
ビンテージっぽい物が得意という訳ではありませんが、そのアイテムと向き合って理想の仕上がりを追求してくれる工場さんです。
FUKUBORIという新たな挑戦は本当に多くの人の協力の元に成り立っていると感じずにはいられないです。
生地の展開
FUKUBORIはこれから本格的に始動していきます。
シーズン物づくりでは無く、破壊と探求を基に製品を作るブランドです。
つまり、基本的には全て定番商品のつもりで展開させていきます。
しかもキナリのみ。
そうなると、一度購入頂いた方に引き続き楽しんでもらう要素は少ないようにも思いますし、取引先のお店の方にそうアドバイスも頂きました。
なのでここで書いているメインの生地とは別の生地(もちろんキナリ)での制作も行う事にしました。
ただ、メインの生地以外の生地はシーズンとしての選択であり、継続して作る予定はありません。
皆様に服を楽しんで頂くと共に、ビジネスとしてもきちんと成立させることで、もっと大きな挑戦をしていきたいと考えています。