今回はFUKUBORIの製品、Field Jacketについて書いていきます。
M65シリーズの探求はJacketから始まりました。
このアイテムは1st,2nd,3rdなど変化が語られるアイテムです。

『目に見えない変化は何か無いのだろうか?』

そんな疑問が僕を突き動かしていきます。
今回はFUKUBRIの紹介なので細かな違いは割愛しますが、1stと呼ばれる初期の物をサンプリングしています。
この年代はM51と呼ばれるField Jacketからの過渡期であり、M65としては未完成と言う事も出来ます。それ故に様々な縫製仕様が1つのアイテムの中に見る事が出来、物づくりの魅力を存分に感じる事が出来ます。この時期のみ肩章が付いていないのですが、肩に閂止めが入っていたりするのもポイントです。(後述します)
過渡期としては2nd型も良いのですが、僕の見た個体は縫製に無理が発生している部分があると感じました。あまりにも無理やり過ぎる縫製は素敵ではありませんからね。


サンプルが完成した今でも選択は間違えて無かったと感じてます。

生地選び


コットン100%のバックサテンです。


「コットン100%?
当時のM65はコットンナイロンが採用されているのでは?」
そう感じる方もいるかもしれません。

採用したコットン100%のバックサテンはミリタリー系の生地に強いと言われる生地のプロがM65では無く、前身のM51を独自に解析して制作しています。
M65よりも重厚感のある生地になっている事も特徴的で、キナリ色しか作らないので染めに対応出来るような選定も良いなと考えた事も理由の一つです。

製品染めの製品を作るつもりはありませんが、お客様が独自に染める事は起こりうる事ですよね。
縫製に使用している糸はもちろん綿糸です。




縫製仕様への拘り



まずは先に述べた肩の閂止めから。
裏地までぶち抜いて止付けられています。
着脱の際に表地と裏地がズレ過ぎないようにするために押さえているのですがこのやり方が斬新な感覚で、ミリタリーらしいバランス感覚を感じます。


内側の縫製

このジャケットは裏地が付いているので内側の縫製はぱっと見は見えないようになっています。

ですが裏付きと言っても裾側がフラシと言って開いている仕様なのでめくれば確認する事が出来ます。

めくってみると、なんと裁ち切りの仕様が目に入ります。
今の物づくりにおいてロックもせず裁ち切りにする事は考えられません。
(デザインとしての裁ち切りは除く)

それでも裁ち切りにしたい!

そう決断したのには理由があって、
表地は裁ち切りにも関わらず裏地の肩は巻き縫いになっていたりと様々な縫製仕様が内側に隠れています。
何を良いとして縫製が構築されていったのかを考えさせられるような縫いになっていて、当時に思いを馳せる事を楽しんでいるオタクとしては敢えて採用せずにはいられないというか、これもまた大きな魅力だと感じているからです。

 

袖口は縫いずらい



この袖のマチの仕様によって縫製の難易度が格段に上がる事になります。
それ故に、3rd型と呼ばれる頃のM65では袖口の構造自体が大きく変更されていきます。
でもこの袖のマチを薄めの別布にしている事によるコントラストや見え方を考えると断然1st型の方に軍配が上がります。
実は2ndを避けた理由の一つにこの袖の部分もあります。
2ndでは巻き縫いが使われる箇所が増えたことで、かなり強引にこのマチを縫い付けるような仕様になっていました。
(そうでない個体も存在するので100%では無い)

「この縫い方をするとこのデザインは難しい」

これは日々の型紙制作の仕事の中でも直面する事の一つでもあり、僕にとってそれは多くの要素が絡み合う服作りの面白さで、FUKUBORIとして選択の理由になります。

袋布


袋布はウエストの当て布に流し込んでいます。
その袋布の構造にもひと手間かけています。

単なる二枚合わせの袋布では無くて、見えない側は切替て縫い合わせています。
今では見ない仕様。という訳ではありませんが、特別指示が無ければこのようにはしないと事が殆どです。
効率の都合が今と昔では異なるという事もありますし、裁ち端は出来る限り見せない。というような事もあるのかもしれません。
でも今回のように流し込む場合は上側の枚数が減るので厚みの軽減になります。
現場では薄れている仕様でも、場合によってはこの方が良いと思う事もあるとはこれもまた良いですよね。
袋布1枚なので殆ど変わらないんですけどね。

zip端の処理


前明きのファスナー端の写真なのですが、左右で見え方が違うのが分かるでしょうか?
衿に入れ込んでいる or 折り込み
です。
これは衿の表裏で縫代の倒し方向が異なる事が大きな要因だと考えています。
今の縫製ならば、表裏衿高でいいや!となりそうですが、当時の縫製で分けてあるんですよね。
これって、本当に沢山の量を縫からこそというか。
沢山縫うならどっちでもそこまで効率は変わらなそうな気がします。

今の日本の縫製現場で、何万枚というような生産は僕の身近にはありません。
数百枚という事が多いのかなと思います。
そうなると、その製品に対しての縫製で慣れていくというよりは、全体に流れている多くの商品の中で「いつもの感じ」という仕様のまとまりが発生してきます。
それってすごく大きな違いだと思いませんか?

PAT SPEC


MILITARY関連の服にはミルスペックと呼ばれる規格が記載された物が縫い付けられています。
それに習って、FUKUBORIではPAT SPECを記載しています。
服、パターンで大きく言えば自由です。

NEVER USE YOUR STIFF BRAIN THNK
硬い頭で考えないでね

隠れたフード


衿にファスナーが付いています。

実はこの中にフードが収納されています。
カジュアルに着用するにおいては活躍の機会はすごく少ないフードかもしれませんがもちろん採用しています。
デザインをしないという事はすなわち、『可能な限りやり切る』という事と同義であると言えますし、何よりも、『やり切りたい』そう強く思って物づくりに取り組んでいます。
それから、こういった隠れた仕様のように
「実は、、、」というようなディティールがある事で服がコミュニケーションのきっかけになる事もあるのでは無いかとも考えていたりもします。



そんな想いを現実にしてくれる工場さんには本当に感謝しかありません。
工場さんといえば、このアイテムは重量のあるTopsを得意とする工場に協力をして頂いています。
長年蓄積された経験に基づく縫製は、縫針のメーカ―や種類までその時のそのアイテムに合わせて選定しプライドを持った縫製をしてくれている事を感じます。
息子さんはミシン屋さん顔負けレベルでミシンを細かくいじったりすることも可能な上に、ビンテージに関する知識も豊富で、打ち合わせに伺う度に学ばせてもらっています。
各セクションのプロの力を借りて作る。
分業制である事も服作りの面白さであり、1人では網羅する事が出来ない事も出来るようになる仕組みだなと考えています。